東日本大震災とチャリティーオープンガーデン

 2011年3月11日に起きた東日本大震災では多くの尊い命が犠牲となりました。この震災の記憶を風化させてはいけないという思いから、ここに深谷オープンガーデン花仲間における震災の記録として文章を掲載させていただきます。これは須磨佳津江さんの「全国のオープンガーデンから被災地のオープンガーデンのお仲間に向けて励ましのメッセージを届けましょう」という呼びかけに応じて書いた手紙です。                                       忘れな草

 

宮城ガーデニングクラブの皆様へ

 東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞いとお悔やみを申し上げます。

 ここ深谷市でもあの日の地震の揺れは私たちがこれまでに経験したことのないものでしたので、ただ事でないことが起こっていることを誰もが肌で感じたと思います。その直後、テレビでは今まさに都市を飲み込み、押し流していく津波の映像が映し出され、人間の力では全く太刀打ちできない自然の計り知れない力に脅威を感じ、無力感に押しつぶされてしまいました。あの日の映像は、今でも生々しく目に焼きついて離れません。

 私たち深谷オープンガーデン花仲間は3月11日の震災後、春に予定されていたオープンガーデンの開催について緊急に協議し、開催するべきかどうか真剣に意見を出し合いました。当初は花仲間の役員会でも「とてもオープンする気持ちになれないよね。」「被災地の状況を考えると暢気に花の世話等していていいものかという気持ちになるわね。」などオープンガーデンの開催を見合わせたほうがいいという意見が出されていました。

 震災後間もない頃でしたので、直接にはあまり大きな被害もない私たちの街ですら、人々は大きな生活の不安や動揺を感じ、多くの人が消沈した気持ちでおりました。そのような状況で近隣の自治体でも3月のイベントはほとんど全て中止した中、深谷市では4月の花フェスタの開催を「みんなが元気になるためにやりましょう。」ということで早い段階で決定したのです。

 私たち深谷オープンガーデン花仲間ではそれを受けて、一人一人が本音で意見を出し合い、オープンすることの是非を検討しました。その話し合いは、普段私たちが花を育て、庭を手入れして、皆様に開放して見ていただくことの意味を改めて考えさせてくれるものでした。

 花を愛する私たちは小さな植物の命を育てることで普段から命のはかなさ、尊さを教えてもらっています。

 人の命も長い宇宙の営みと比べたらほんの一瞬の輝きでしかありません。それでも、だからこそ、今という時を大切に生きて、小さくてもかけがえのない命の灯をともしたいと

思うのです。花を育てていると、健気に咲く花たちに心を和ませてもらったり、時が来れば芽吹き、成長していく姿にパワーをもらったり、生きる希望を与えてもらっていることを感じます。

 話し合いはいつしか参加者全員がオープンすることを前向きに受け止め、建設的な意見が多数出されていきました。最終的にはチャリティーオープンガーデンとして各戸に義援金募金箱を設置し、被災地に思いを向け、私たちの心を届けたいという気持ちでオープンを実施することで意見がまとまりました。

 皆の気持ちが一つになったことで、初めのうちはオープンしないといっていた人もオープンを決意してくれたり、会議に参加できなかった方からも賛同の声が寄せられたり、今までにない思いのこもったオープンガーデンにしたいという気持ちがさらに湧いてきました。それからはオープンに向けて準備に余念がありませんでした。

 ここ深谷では冬場はからっ風が吹き、乾燥しています。例年ですと3月には少しずつ気温が上がり、恵みの雨が大地を潤してくれます。しかし、今年は冬の寒さは大変厳しく、また春先になっても雨がほとんど降らないような様子でした。震災後は計画停電が実施され、節電や節水を余儀なくされ花を育てるのも一苦労でした。

 オープン当日も、果たしてお客様がお見えになるのだろうかと心配しておりましたが、予想に反してたくさんの方々が庭を訪れてくださいました。

 義援金募金箱も強制ではなく、お気持ちを頂けたらという思いで設置してありましたが、おかげさまで大勢の皆様からたくさんのご協力を頂き、オープンガーデンフェスタ(4月29日、30日開催)、バラの庭・初夏の庭(5月21日、22日開催)で寄せられた義援金は455,623円になりました。後日、日本赤十字社埼玉支部を通じて、被災地に送金させていただきました。

 私たち自身は今回のオープンガーデンを通じて、これまで以上に、お金には換えられない温かな心の交流をさせていただくことができました。

 被災地の皆様におかれましては復興までにまだまだ時間がかかり、震災から受けた心の痛手はなかなか癒えることはないとご推察いたしますが、どうか希望を失わず、前へ向かって一歩一歩、歩んで行かれますよう心より祈っております。

 私たち深谷オープンガーデン花仲間は、花の街・深谷から共に花を愛するもの同士、真心を込めて庭を育て、街をつくり、これからも皆様に発信していきたいと考えております。私たちの思いが宮城の皆様に届き、皆様の心にも一日も早くたくさんの希望の花が花開きますよう願っております。

        2011年9月20日

                  深谷オープンガーデン花仲間代表 嶋村 靖子

                         同        役員一同